Vol. XI, No. 113 平成十七年九月九日

9・11選挙の争点は郵政でない。小泉を信任するか否かである。彼の目的はレジーム・チェンジ、憲法改正、日本の独立である。憲法改正に託された目的の一つには反米病の治癒もある。これは大型の無血革命だ。「黒船」も「鳥羽伏見の戦い」も国民の知らないところで既に起きている。この革命の全体像を把握して、小泉に投票してほしい。これが最後のチャンスだ。小泉が失敗すれば次にくるのは暴力革命だろう。1000兆円の財政赤字が爆発するからだ。

1990年、バブルの崩壊と冷戦の終焉がいっしょにやってきた。日本が巨大な不良債権を背負い、放置すれば膨れ上がって命取りになることを宮沢喜一は知っていた。日本が地域戦争の脅威に曝されることも米国政府が警告していた。しかし守旧派が時計の針を押し留めたのである。守旧派は現状維持しか出来ないのだった。

だが、どうして旧田中派・保守本流がそれほど無能で不能だったのか。なぜ彼らは自分の墓穴を掘ったのか。この疑問を解明するには、次の疑問に答えるのがいいだろう。もしも、黒船と鳥羽伏見の戦いにおける薩長連合軍の勝利がなかったならば、明治維新が成功しただろうか。いや、幕府は、宮沢喜一のように、問題の先送りで延命を図ったのでないか。

一つの体制(憲法)が維持されるには三つの要件が満たされねばならない。(1)外敵の脅威から国を守る手段を持つこと。幕府をゆさぶったのは黒船であり、清朝はアヘン戦争で致命傷を負った。(2)体制を正当化するイデオロギーが深く国民に浸透していること。(3)体制を守る統治階級に相応の利権が分配されることだ。

「黒船」は未だに来ていないように見える。平和主義も牢固として健在だ。しかし橋本派の利権は80%まで小泉によって「ぶっ壊された」でないか。あれが「鳥羽伏見」なのだ。でも「黒船」はどうなったのか。

冷戦の終焉で地域紛争の時代が始まった。湾岸戦争に直面したブッシュ41(41代大統領、父親のブッシュ)は、「新世界秩序」を宣言し、日本とドイツに参戦と自主防衛を要求した。ドイツのコール首相はそれに応じた。

だが竹下登は憲法を盾にとって拒絶し、130億ドルの御用金を払った。 当時、ホワイトハウスは十人ほどの日本研究家をひそかに集めて、日本の平和主義についての分析を聴取している。微妙な問題なので日系市民は排除された。

結論は、平和主義は反米感情の予備軍であり、反米世論は顕在化している。従って、自主防衛を押し付けるのは危険であるというものだった。日本が保護に対して多大の支払いをしている以上、自主防衛は百害あって一利なしというのだ。反米の日本は怖い。護憲の竹下を泳がせておく方が安全だというのだ。

しかし少数派意見があった。それによると、日本は反米護憲に凝り固まって、動きがとれない。これをほぐして、日米友好の利を悟らせるには、一人歩きをさせるしかない。外敵と衝突すれば、日本はアメリカが友人であることを自覚するだろうというのだ。

だが、ブッシュ41はこの意見を却下している。そして彼は自動車セールスマンとして日本を訪問することになる。当時、在野中のリチャード・アーミテージは、学者でないからこの会合に出席していないが、少数派とコンタクトして勉強会を開いたらしい。

戦後の日本は、平和主義の名において反米外交を推進してきた。この外交は朝鮮戦争と共に登場した。講和条約の交渉にきたダレスが、朝鮮と台湾の防衛に日本の貢献を要求した時に、吉田(とマッカーサー)が憲法を盾に拒絶した。

しかし吉田の本音は平和主義でない。彼の本音は「アメリカが日本から奪った領土だから自分で守りなさい」というものであり、その根底には反米感情があった。これを知っている米国は、吉田の平和主義を認知するという形で、占領を継続していく。

吉田茂から宮沢喜一まで、保守本流の擁護した憲法は占領継続と表裏一体であった。アメリカの占領は、ブッシュ41からクリントン政権に引き継がれた。この体制を転覆したのがブッシュ43だった。彼は父親が却下した少数派意見を採択したのだ。

これが集団的自衛権行使を要求する「アーミテージ・リポート」だった。この要求は、普通の日本人には「黒船」の再来とは見えなかった。しかし「米軍再編成」と韓国からの一方的な米軍撤退は明らかに「黒船」であり、有無をいわせぬものだった。あれは「アーミテージ・リポート」の延長に過ぎない。

反米平和主義は憲法で甘やかされた有閑階級のあそびである。[1] 日本人は、自主独立とは平和主義に徹することであり、従って米軍占領を継続することだと思っている。これは倒錯も甚だしい。しかし米国政府は遂に日本の自主防衛を要求したのである。

アメリカ政府は、日本だけに残る第二次大戦の遺物を解体したいのだ。盧武鉉の韓国でさえも日本よりはるかに独立志向だ。「日本人よ、いい加減にしよう」とブッシュはいうのだ。占領が終われば、日本人は現実的になるだろう。

「アメ通」を読まない日本人は、01年のブッシュ就任と共に「黒船」が来たことは知る由もない。また、小泉の靖国参拝の目的は、外務省のODA予算から対中援助を切り捨て、橋本派の利権を奪い、これを「ぶっ壊す」ことだった。これは「鳥羽伏見」と解釈していいだろう。

「黒船」と「鳥羽伏見」は小泉首相が主導したものである。バブル崩壊から15年の停滞、逡巡、優柔不断、弱体化を経て、小泉ニッポンは動き始めたのだ。これで日本の行く手に曙光が見えるようになったのだ。


[1] 平和主義者が小泉をブッシュのポチだ、プードルだと嘲笑する権利はない。彼らこそが米軍の日本占領を長引かせた元凶である。社民党の福島瑞穂がその一人だ。憲法にしがみついて米軍占領を許しながら、独立指向の小泉を批判するとは片腹いたいというものだ。


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