片岡鉄哉のアメリカ通信

Vol. XII, No. 55 平成十八年五月ニ十九日

  • ブッシュ、18ヶ月でイラク撤退開始 [1]
  • イラン大統領との妥協成立か?
  • ワシントンは超流動的

イラクでは無能なジャアファリ政権が降板して、マリキ政権が成立したばかりだが、その新イラク政権が、隣りのイランの「反米政権」と協力して、イラク・イラン国境をテロが往来するのを阻止する、とタイムズは報じている。昨日送信した54号では、イランのアーマデニジャド大統領が、対ブッシュに接近を切望していると述べた。これは大きな地殻変動を示唆するものだ。ブッシュはイランと手を結んで、イラクから撤退するものと私は推察する。そして中国に専念するのだろう。共和党はローマの軍団なのである。停滞することは拒否するのだ。


共和党はローマの軍団

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Vol. XII, No. 54 平成十八年五月二十七日

  • 「敵はジハードでない中国だ」[1]
  • 核先制攻撃とシーレーンで米に挑戦
  • ペンタゴン報告が戦略転換を示唆

米国防省は中国に関する報告を毎年公開するが、今年のものは異色である。これを米国政府が信じているなら、イラクのジハード(殉教者)との戦いは ”a wrong war at a wrong place” になる。アメリかの本当の敵は中国だということになる。中国の脅威は台湾問題にからんで派生するのだが、二つに絞られる。核の先制攻撃とシーレーンに対する脅威である。これはアメリカにとって伝統的な、戦略的なものだ。ペンタゴンにとっては、伝統的な脅威の方がテロリストよりは御し易いのだろうか。


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Vol. XII, No. 53 平成十八年五月二十二日

  • 対日挑発は逆効果、胡錦濤
  • 靖国たたきの失敗を認める
  • だが油断は禁物

中国による日本挑発がぴたっと止まった。いささか拍子抜けでさえある。経団連の奥田会長は、日中関係は「のどに小骨が刺さった感じで流れて行き、悪化はしない」「日中両国の首脳間で対話が無いことは不幸だが、経済に不安はない。政治が冷たい関係ならば、経済から政治を温めたい」と言明している。[1] 胡錦濤が譲歩したのだ。去年11月、ブッシュの京都訪問から、米国務省は日中双方に働きかけて、日中歩み寄りを取り付けたのである。小泉が勝ったとはいえないが、負けたともいえない。双方の「歩み寄り」だ。何が起きたのか。


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Vol. XII, No. 52 平成十八年五月十八日

  • 遂に北朝鮮との講和条約交渉に合意
  • ただし日本は外す
  • どこまで後退するのかブッシュ

03年に北朝鮮の核抜きを図る六者協議が始った時点では、米朝の講和条約を締結することを平壌が要求していた。講和条約で自分の安全をアメリカが認めることを条件にして、核兵器を放棄するというのであった。しかしブッシュは講和条約などはとんでもない、と却下した。先ず北朝鮮が最初に核兵器を放棄しなさいというのだった。18日のタイムズは、遂にブッシュ政権が、米朝講和条約の締結と核抜き交渉を並行して進めることに合意したと伝えている。同時に、六者協議の枠は放棄される模様である。その理由は説明していない。[1]


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Vol. XII, No. 51 平成十八年五月十五日

  • 東は東、西は西
  • 御用金で帝国主義を賄う米国
  • アメリカに貢いで破産した日本

マーティン・フェルドスタインは、ハーバードでは稀な保守派の経済学者だ。彼は最近十年のアメリカが異常な速度で富裕になったことに注目し、その背後にあるメカニズムを解明している。[1] 最大の関数は「外国からの投資」である。彼は沈黙しているが、これは日本からの投資に他ならない。日本はアメリカに骨までしゃぶられて貧乏になり、「格差社会」になったというのに、当地の善男善女は、小泉の仕業だと勘違いしているのだ。アメリカに贈賄をしたのが経世会である。


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Vol. XII, No. 50 平成十八年五月十四日

  • 東条英機の分祀を明言せよ
  • タイムズが絶叫したら負ける
  • 小泉の素人・蛮勇外交に危惧する

日米同盟「再編」の立役者、小泉純一郎を褒めたたえる儀式がワシントンで6月に行なわれる。最後の国会は開会中だが、総理は重要法案は通過の目処をたてて、お土産に持参したい。しかしワシントンには彼の敵も待ち構えている。

総理は、ブッシュがこれまで庇ってくれたので、少しアメリカを甘く見ているのでないか。アメリカの半分は民主党であり、民主党の代弁者はニューヨークタイムズであり、タイムズは朝日と全く同じ波長である。


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Vol. XII, No. 49 平成十八年五月十三日 公開号

片岡鉄哉のアメリカ通信 Vol. XII, No. 49 平成十八年五月十三日
  • 象徴・祭司だけの天皇制は消滅する
  • 権力のないカリスマはあり得ない
  • 明治憲法の知恵を再現できるか

旧皇族竹田家の恒泰氏の講演を聞きに行った。天皇家が何を考えているのか知りたかったからだ。答えは、象徴天皇、祭司天皇に苦情はないらしいことだ。つまり、マッカーサー憲法のままでもいいらしいのだ。この点で、天皇家とナショナリストは合意がある。双方とも、象徴天皇は明治維新より前にあった天皇制本来の姿に戻ったに過ぎないと言う。だが象徴天皇に国家権力はないし、祭司天皇は天皇家特有の宗教の祭司であり、国教会の祭司でない。この現状で60年間維持できたのだから、永遠に維持できると言えるのか。権力のないカリスマは消滅するのでないのか。なぜ天皇元首論を誰も唱えないのか。

十五年ほど前まで私は皇居のまわりを走るのが好きだった。調子がいい時には二回まわって大手門のあたりで止める。或る日、汗を拭きながら涼んでいると、黒のリムジンが低速で近づいてきた。中を見ると昭和天皇だった。私は反射的に旧軍の目礼を差し上げた。[1] 陛下は手をあげてお答えになった。嬉しかった。

私の昭和天皇と今上天皇への態度には温度差がある。これは合理的に説明のつかないものだ。私は昭和天皇は自分の父親のような気がするのだが、これは明治憲法によって刷り込まれたものだ。家鴨の子が卵から孵化して、最初に遭遇したものなら誰にでも着いていくのと同じだろう。

後日知ったことだが、昭和天皇は占領中からご逝去まで、事実上の元首であられた。戦前の元首ではなかったが、単なる象徴・祭司ではなかった。彼のマッカーサーとの頻繁な会見の話を読んでいると、昭和天皇は事実上のファースト・ディプロマットだったことがわかる。

彼は憲法で決められた象徴天皇の枠を意識して克服していたものとしか考えられない。象徴天皇を作ったマッカーサーが、象徴天皇を破壊するように仕向けていたのだ。これは凄い外交だと思う。ともかく昭和天皇は象徴天皇と戦っていたのだ。私はそう推測する。

これこそが英邁な天皇でないか。占領軍が押し付けたものを糞まじめに守るというのは小市民的な発想であり、大国のリーダーのするべきものでない。今、憲法改正が可能になるところでないか。改憲の焦点は、戦争を可能にすることだ。これは国家の機能が拡大することを意味する。つまり天皇の役割が拡大するのである。

判りますか。天皇制が象徴に制限された理由は、日本が戦争に負けたからだ。だが今や戦争が可能になるとすれば、我々の仕事は次の戦争に勝つことだ。勝てば天皇制は強化される。どうしても勝たねばならない。

日本が戦争に突入すれば、天皇が中立することは不可能である。首相と与党が天皇の支持を要求して絶対退かないであろう。二大政党の下では、戦争は必然的に「自民党政権の戦争」、或いは「民主党政権の戦争」になる。党派的なものになる。

しかし国民は「自民」や「民主」の党派的利益のために戦うのを拒否する。これは疑いない。国民の支持を勝ち取るためには、天皇の権威を借りることが不可欠になる。天皇だけが、党派を超越した国益の代弁ができる。

首相と与党は天皇の支持を要求する。だが、同時に野党は天皇の反対を要求するかも知れない。だから戦争には超党派の支持が不可欠なのだ。ともかく、絶対勝つことが不可欠なのだ。天皇が小泉の戦争を支持しながら、戦争に負けたら小沢の天下になる。これで天皇の立つ瀬はなくなる。だからどうしても勝たねばならない。

憲法改正によって天皇家と天皇制の前途には洋々たる大海原が開けるようなものだ。自分を外敵から守るのが国家の最も大事な機能であり、天皇制は国家の一部だ。これまで棚上げされていた職能が天皇制に戻ってくる。

日本が普通の国になると、同時に天皇制は蘇生するのだ。[2]


[1] 目礼では頭を下げないし、目も落とさない。相手の目をしっかり追いながら、腰から上半身を10度ほど傾ける。ドイツ軍にも共有の敬礼だった。

[2] 英国は主権在民の民主国家である。それでも、憲法の「聖なる部分」である国王には、僅かながら中世時代の国王の権限が残されている。下院が首班指名において、意思決定不能におちいった場合は国王が総理大臣を選ぶことを許される。これだけでも天皇陛下に差し上げたい。権力ゼロになったら「人畜無害」になるのだ。


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Vol. XII, No. 48 平成十八年五月十日

  • 「自立なき国家の品格とは?」
  • 鷲田小彌太の藤原批判[1] を賞賛する

鷲田兄

藤原の書評を読ませて頂きました。実をいうと、小生は「国家の品格」に、びた一文も投じるのを忌避して、買っていません。従って、読んでいません。読んだのは、彼が寵児になってから書いた短い論文です。特に、小生を驚かせたのは、朝日の編集長が「論座」で一席もうけて、藤原をもてなしていることです。これは一種のプレス・キャンペーンです。朝日が売り込んでいる本を買って読む気にならなかったのです。


鷲田小彌太氏の『国家の品格』書評論文とあわせてこの続きはコチラから!

Vol. XII, No. 47 平成十八年五月七日

  • 「アメリカを軽視するな」とチェイニーが警告
  • 胡錦濤への無礼は意図されたもの
  • 小泉が失敗したら米の反応は?

5月4日チェイニー副大統領が、わざわざ旧ソ連圏のリトアニアまで出かけて、ロシア外交に対する警告を出した。米諜機関によると、中国に対しても同様の警告を既に出したのだという。胡錦濤の訪米では、ブッシュ政権は国賓待遇を拒否し、二度に及ぶ無礼を犯したが、あれは意図されたものだった。ブッシュ政権は、自分がイラクの泥沼にはまったことに中・ロ両国がつけいり、膨張するのは危険だと警告しているのだ。これは日本の反小泉陣営が倒閣運動に出たことへの警告とも解釈できる。ブッシュは、どうしても日本による集団的自衛権行使が欲しいのだ。倒閣運動の首謀者である朝日はどう出るのか。


「う〜ん、この続きが読みたい!」という方、続きはこちら!!

Vol. XII, No. 46 平成十八年五月四日

  • 日本外交はイスラエル化
  • 小泉・ブッシュvs.日米リベラル連合の構図
  • 靖国問題で浮上

ユダヤ人の頭脳明晰が先天的なものか、それとも迫害された歴史の過程で学習したものか(下段参照)。それはさておき、米大統領が民主党になると、イスラエルは労働党内閣を選出し、共和党になるとリクード(保守)内閣を選出してきた。かくしてイスラエル政府は、世界の如何なる国よりも米国政府に密着してきた。似たような現象が日本でも始っている。小泉・ブッシュの緊密な関係が、日米に跨ったリベラル連合を呼び起こしているようだ。靖国問題が焦点だ。

ただし、日本民主党は政権をとったことがないので、アメリカの民主党リベラルから見ると興味がない。そこで、米民主党は自民の保守本流と提携してきた。・・・・


その米民主党から靖国の歴史観に否定的な意見が出てきた。
つまり、次期大統領選で民主党政権が成立すると・・・

詳しくはコチラから

Vol. XII, No. 45 平成十八年五月一日

  • ポルトガル、スペイン、英国に次いで
  • 静かに老衰する日本民族
  • 第二の敗戦の「教訓」は何だったのか

日本の将来に希望を与えてくれる数少ないものの一つは幼児だ。小学生に語りかけると、ソッポを向いて逃げる。(見知らぬ子供と話したかったら外国に行くしかない。)つまり、日本人の色に染まっていない幼児だけに可能性がある。成人のすべては老人みたいに元気がない。青雲の志を持つ男は松井、野茂、イチローのようにアメリカに賭ける。日本の世論は割れていて団結できない。これが老衰の原因だ。これは景気の回復と関係ない。日本は、国防の是非について二つに割れているのだ。国防を支持する世論もアメリカからの独立は考えていない。これが中国との違いだ。日本人は自分の家にいても居候のような気分なのだ。アメリカが撤退して、自分自身で中国・北朝鮮と対決するまで、日本人の背骨はしゃんとしないのであろう。


反小泉が問題にする「社会格差」は本当に小泉改革の産物?
バブル崩壊以後の保守本流の責任を明らかにするこの続きはコチラから!!

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